ドクターズボイス

DOCTORS VOICE
vol.14
DOCTORS VOICE
竹元 京人
イーライン矯正歯科
院長 竹元 京人 Takemoto Kyouto
 

審美性に偏った治療のゴールを立てない

イーライン矯正歯科の竹元京人先生
 
矯正治療は患者さんがよい噛み合わせ、よい機能で一生自分の歯で噛めるような長いスパンで考えた治療をすることが大切だと思います。そのためにも無理な治療計画、無理な治療のゴールは立てないということが大切です。

患者さんが審美性に重点をおくことはわかりますが、なにがなんでも審美性を一番の目標にして治療した結果、歯肉の退縮や歯根吸収を起こしたり、あごの骨から歯が落ちてしまうといったことがあってはならないと思うからです。歯は見えている部分だけでなく、動かすと一体になっている歯の根も動きます。歯並びの見た目だけでなく、歯の移動は顎の骨の中に根をとどめなければなりません。
イーライン矯正歯科の受付
 
他院で矯正をされて再治療を希望される方の中に、歯根吸収や歯を動かし過ぎて顎の骨から歯根が飛び出しているケースが増えており憂慮しています。無理な歯の移動が原因であり、噛み合わせが犠牲になっていることもあります。

症例によりますが、全て歯の移動だけで治ると思って進めることは早計です。あごの骨が前後、あるいは左右にズレているケースもあり、歯の矯正だけではきれいに治せないこともあります。矯正治療には限界があることも念頭に患者さんとゴールを決めて行く必要があります。

診断を重視し、CT画像も活用

イーライン矯正歯科の診療室
 
先にお話ししたような不具合を起こさないためにも、治療前の診断は非常に重要です。治療に手をつける前に十分な時間を割いて診断を行うことを舌側矯正(裏側矯正)の講習会でも話しています。診断の重要性はマウスピースを使った矯正治療でも同じです。

ドクターにとって歯をどこまで動かすかというのは常に頭を悩ませる問題ですが、CTを撮ることで精度の高い診断が可能になります。CTの立体的な画像から骨の厚みが詳細にわかるので、移動距離を予測することができるからです。
イーライン矯正歯科の診療室
 
さらには鼻腔の骨の形状や、舌や喉までを事前にチェックすることができるという点も安心です。喉が狭い人の場合は、歯を下げ過ぎるといびきの原因になったり、無呼吸症候群になったりするからです。一人ひとり患者さんの骨格は違っていて難しいケースもありますが、その中で機能と審美のバランスを取りながら、呼吸のしやすさ、気道の確保といったことまで考慮して歯を長持ちさせる治療を追求することが、患者さんにとっても一番よいと考えています。

デジタル化でより精密に、より快適に

デジタル機器を取り入れた治療
 
現在、医療の分野もデジタル化によって大きく進展していますが、矯正治療の世界も例外ではありません。当院で開発した舌側矯正装置「ALIAS」においてもデジタル化による新技術を導入することで大きなメリットがもたらされています。

その一つは治療の精度が飛躍的に上がるということです。CT撮影によって精密3次元画像診断ができるほか、VTO(ビジュアル トリートメント オブジェクト)という治療計画書に、たとえば傾けたい角度やトルクなど必要な数値を入れることで歯の移動シミュレーションができるだけでなく、その数値を読み取ることで精密な技工物を製作することができます。そのため、あとから修正を加えて微調整するといった修正作業がいらなくなります。これによりドクター間のスキルの差をできるだけ無くすことができ、ALIASはまさにそうしたデジタル化のメリットを実現したシステムといえます。
口腔内スキャナー
口腔内スキャナーで歯の形状を読み取り
 
ただ、その数値を出すのはドクターであり、経験や知識に裏付けされた診断能力といったものが問われることになります。私はよく講習会で「治療は装置を着けるところから始まるが、ドクターは装置をつけたあとのワイヤーベンドを頑張るのではなくて、つける前のよりこまかなプランニングを頑張りなさい」と言うのですが、矯正医は手術を行う外科医である前に内科医でなければならないということなのです。手術する前の段階がとても大事であり、1本1本の歯を、どこにどのように動かすことがベストなのかということを考えて治療する必要があります。
イーライン矯正歯科の竹元京人先生
 
デジタル化により診断の重要さがこれまで以上に増していると感じています。そして、今まで以上にドクターがより緻密な治療計画をたて治療する時代にならないといけないと思っています。
その他の先生の記事をご覧いただくにはこちら
 
 

ページトップへ