医師から最高のパフォーマンスを引き出すには

TO DRAW THE BEST PERFORMANCE FROM A DOCTOR
病気になっていざ治療を受けるとなった際にまず、だれしも思うことはよい医師に診てもらいたいということであり、できるだけよい医療を受けたいということではないでしょうか。とくに手術などは経験が豊富な腕のいい医師に施術してもらいたいと思わない人はいないでしょう。そのために病院選び、医師選びは重要であり、慎重に行いたいものです。

最高の治療を手に入れたいならばもう1つ、忘れてはならないことがあります。それは私たち患者側のことです。医師は誠実に診療行為を遂行する義務を負うことは当然ですが、患者も医師の診療に協力をする努力義務があるということです。決められた時間に決められた分量の薬を服用するということもそうですし、医師からのさまざまな指示にしたがって生活をするということもそうです。このように医師と患者がお互いの義務を遂行して協力し合うという信頼関係のもとに治療は行われているのです。

ところが、最近はこの医者と患者との信頼関係を揺るがすような患者さんが出現しているというのです。ある矯正クリニックの院長先生のお話です。「初診の予約だけ入れて、当日、いくら待っても姿を見せない人や、直前になってキャンセルしてくる人も珍しくはなくなりましたね。なかには自分に合った矯正歯科医に出会うために病院を渡り歩いていらっしゃる方もいて当院もその中の1つであるとおっしゃったり、自分で治療方法まで決めて来られる方もいます。自分の方がなんでも知っている、医者は自分のいう通りにしていればいいといった横柄な態度に、こちらもどう対応していいのやら苦慮しています」

こうした困った患者さんの出現によって、医療現場ではさまざまなトラブルが増えているとのことです。なかでも、医師にさまざまは要求を押し付けたり、自分の希望する治療以外は拒否するなど自己中心的な患者さんが増加傾向にあるといいます。研究熱心な患者さんは医師としても基本的には歓迎しますが、自分の調べたことに固執するあまり、目の前の医師の言葉に耳を貸さないということになると話は別です。ネットやテレビの情報の多くは断片的であり、その一部を過剰に表現しがちです。また、どんな治療法も万能ではなく、すべての患者さんに適応するものでもありません。患者さんそれぞれで最適な治療法というのは違ってきて当然なのです。

医師やスタッフがそうした患者さんに説明したり説得するために時間や労力を取られるため、クリニック全体の診療がまわらなくなり、結局、他の患者さんにも迷惑をかけてしまう結果となります。

自分に合った医師を探しだすべく、ドクターショッピングに熱心な患者さんも、じつは医師からはあまりよく思われません。結局は本人が時間やお金を浪費するだけでなく、医師の側でもほんとうに自分のことを信頼してくれるのかどうか、疑念を抱かざるを得ないからです。

こうしたちょっと困った患者さんは損か得かといえば、自分の主張を通すことで得をしたように思うかもしれませんが、医師としてはその患者さんにベストの治療ができず、納得のいかない結果とならざるを得ません。患者さんも医師との信頼関係を最後まで築けず、その医師から最高の治療を受けるチャンスをみすみす逃してしまうということにもなりかねません。

とくに矯正治療の場合は治療期間が長く、その間、装置の調整のためにクリニックに通いますが、それ以外は取り外しのできる装置を指示された通りに使ったり、食べ物に気をつけたりとすべて自己管理のもとで行わなければなりません。患者さんの日々の協力なくしてはなしえない治療であり、医師と患者との間に信頼関係がなによりも大切だといえます。

医師は患者さんのために自分の力を最大限に発揮したいと思っています。得をする患者さんとは医師からの信頼を得て、最高のパフォーマンスをその医師から引き出せるような患者さんになることだといえます。ただ、それは医師にごまをするとか気に入られるよう媚びを売るとか、そういったことではありません。社会人としてのルールを守るなどの当たり前のことであり、医師と患者とかお互いに一人の人間として尊重し合うことです。医師の意見にすべて従うことがよいのでもなく、言いたいことが言い合える関係を築き、納得するまで医師と意見を闘わすこともよい結果につながるはずです。

医師と患者とが心を合わせて二人三脚で難局を乗り越え、最終的に治療をしてよかったと思うことができれば、それは大成功の治療といえるでしょう。

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