ドクターズボイス

DOCTORS VOICE
vol.4
DOCTORS VOICE
おだいら矯正歯科
院長 小平 安彦 Odaira Yasuhiko
 

歯科医師であるドクター自身の経験と近年の矯正装置事情

今から10年以上前になりますが、実は、歯科医師である私自身も、歯の裏側から行う矯正歯科治療、つまり舌側矯正で歯列(歯並び)の矯正を自ら行った、患者の一人でした。
そこで今回は少し趣向を変え、私の経験を、歯科医師としてドクターの立場と、そして歯科治療を受ける患者両方の面から書いてみようかと思います。

私の歯並びはもともと叢生、いわゆる歯のでこぼこでした。
叢生(そうせいと呼びます)とは、八重歯・乱ぐい歯 ともいいます。顎(あご)の骨が歯に対して小さいので、歯が並びきらずに、前後に傾斜(けい しゃ)したり、歯ぐきの根元からや内側から生えてたりするものです。

叢生の程度としては、軽度から中程度でしたので、永久歯を抜かずに約1年3カ月間かけて舌側歯科矯正により治療しました。
その当時はSTb(リンガルブラケット矯正装置)*注)のような薄型の歯科矯正装置が存在しない頃でしたから、昔からある装置で歯の矯正治療をおこないました。

当時の舌側矯正の装置を着けた直後、うがいをした時の感想は、「この程度なら大丈夫そうだな。」程度の軽いものでした。
しかし、実際に装置を着用したまま言葉を発してみてびっくり、「やっぱりしゃべりづらい!」

歯の裏側につける装置は、慣れるまでの期間が人によって違いますが、元通りの発音ができるようになるまで、慣れにくい方ですと一ヶ月近くかかるといわれています。
実際に私も一ヶ月ほどで、今までどおり話せるようになりましたが、この時ばかりは、「本当に普通にしゃべれるようになるのか?」というのが本音でした。
また、通常通り話せるようになってからも、とても仕事が忙しい日の夕方ぐらいになると、舌が回らなくなり、うまくしゃべれないことが、何回かありました。

そして当時、もうひとつ辛かったことは矯正歯科治療中の「痛み」です。

歯科矯正装置を付けた当日はまったく痛みを感じず、夜には刺身のいかなども平気で食べていました。ところが次の日の朝起きて、歯と歯をかみ合わせた瞬間またまたびっくり!すべての歯が痛くてたまりませんでした。
次の日の朝食は取らず、昼もウィダーインゼリーとうどんを2本食べただけ、夜は定食屋で麻婆豆腐の単品を注文し、豆腐とスープの部分だけ飲みこみました。

歯科矯正時の痛みは大きく分けて2つあります。

一つは歯が動くことによる独特の痛み(私は歯がうずくような痛みに感じました。)そしてもう一つは歯科矯正用装置が口唇や舌にあたる痛みです。
歯が動く痛みに関しては、矯正装置を付けた夜あたりから2~3日がピークと言われています。
私の場合は歯の反応が鈍かったのか、その日の夜はなんともありませんでしたが、2日目に痛みのピークがきました。

現在の最新技術を使った舌側矯正は昔に比べ、格段に治療方法が進歩しています。
治療の質ももちろんですが、患者さんにより優しい治療方法になってきています。

最近の患者さんがSTbを着けた直後から普通に話しているのを見ますと、自分がつらさを知っているだけにとても安心します。

痛みに関しても昔に比べると、痛みを訴える方や、我慢できず鎮痛剤を飲まれる方が格段に減りました。嬉しい限りです。

それでも痛みを訴えるはいらっしゃいますが、舌側矯正や歯列矯正装置に慣れない方は一人もいません。
必ず痛みは徐々になくなってきますのでご安心下さい。
本当に、これから舌側矯正を受けられる方は幸せだと思います。
注)STb(リンガルブラケット矯正装置)
舌側矯正用に開発された歯列矯正歯科用装置です。
従来の矯正装置よりも、小さく薄いことが特徴です。
そのため、装置を付けた場合も違和感が少なく、また、弱い力で歯を動かすため、痛みが軽減されているメリットもあります。
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